【異音編】現場経験こそ活きる!一級自動車整備士の口述試験とは?

この記事では国家一級自動車整備士試験の口述試験ってどんなこと質問するの?
なんて答えたらいいの?
という疑問にお応えします!

ドキドキするのは入室して座るところまで。

お客様(役)と対峙してしまえばここから先は私たち整備士のターン!
怒涛の攻撃スタートです。

私はこの練習のおかげで、入社してすぐからお客様への問診だけは得意でした!

現場経験こそ活きる!一級自動車整備士の口述試験とは?
現場経験こそ活きる!一級の口述試験とは?

一級自動車整備士試験にある口述試験って何?

口述試験に漠然とした不安がある人は
「どんな内容の試験かわからない」ということがあります。

読んで字の如く、お客様との会話というシチュエーションでの受け答えが採点される内容で
令和2年度の一級小型自動車(口述試験)の合格率は99.2%となっているようです。
(参照元:日整連ホームページ)

口述試験の時間時間と試験内容

国家一級自動車整備士の口述試験について過去問を調べてみると

  • 不具合を訴えているお客様に対する問診
  • 仕様の本拠地が変更となった際に法律上必要な手続きについての説明
  • 点検・整備記録簿の作業内容(交換部品)の説明
  • お客様の質問に対する回答

などとなっているようです。

過去問をチェックしよう

【整備士 口述試験】などで検索すると、日整連のホームページから過去問を見ることができます


試験時間はそれぞれ5分間です。

短いと感じるでしょうか?

日頃からお客様と接して不具合についての問診や整備後説明に慣れている人であれば特に苦戦する時間ではありません。

とはいえ、いつもならお客様自ら症状を訴えてくれるところを試験官は質問した内容にしか答えてくれないため、口述試験ではいかに用意された文言を聞き出すことができるかが重要になります。

【異音編】おすすめの質問方法

例えば異音系の内容を問診したいとき、
音の原因や発生条件ばかり気にしてしまうと
取れるはずだった情報を逃す恐れがあります。

以下、このブログ内では異音の場合を想定した聞き方を記載しますが
その他の症状でも言い回し次第を変えれば応用ができます。

いつからですか?から広げる

ーいつからですか?
「先週からです」


日時の確認ですが、ここから派生して発生した時間帯、気温、当時の天気などが確認できます。

異音を確認した日から状況は悪化しているのか、はたまたその日一度限りだったのかも聞けますね。

天気については「晴れていた」と回答された場合にもう一押しして「路面は濡れていたか」も聞きましょう。
雨上がりという可能性もあります。

また路面つながりで凸凹道か舗装された道か、砂利道かなども聞いておきましょう。

復唱しながらメモを取る

実際のお客様へ問診する際と同じように、相槌を打ったり復唱することは自分を落ち着かせるためにも重要なポイントです。

また、帰ってきた返答に対して「それではこういう場合にはどうですか?」と言ったようなキャッチボールができると、より会話がスムーズになります。


ーどのような操作をしたときに音が出ますか?「ブレーキを踏んだ時です」

ーブレーキを踏んだときですね、それではアクセルを踏んだ時はどうですか?
と言ったような具合です。

国家一級自動車整備士の口述試験では落ち着いてメモを取ることもポイント
メモに必死にならず、自然な会話を心がけよう



また、質問のしかたが曖昧だったり、試験官に回答が用意されていない場合には
「関係ありません」と言われます。

ちょっと冷たい回答なのでヒヤッとしますが、これを聞き出すことができればその系統を除外しながら質問を進めることができますね。

上記のアクセルについて関係がないと言われれば
ーアクセルを踏んだときには音が出ないのですね「はいそうです」
という流れを作ることができ、加速中のことは考えずに進めることができそうです。

5W1Hは気にし過ぎないように

基本と言われる5W1H、パッと答えられますか?

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:だれが
  • What:何を
  • Why:なぜ
  • How:どのように


が一般的ですが、この丸暗記だと聞き漏れや意図せぬ回答を呼ぶことになってしまいます。

いったいなぜなのでしょうか?

よくない例:曖昧な質問とは?

ーどこで音がしますか?

このときの「どこ」というのは何を指すでしょう?
「エンジンルームです」「高速道路です」のように相手の解釈次第で全く異なる回答が返ってくることが考えられるのです。

想定していた回答パターンとズレると焦って自分のペースが乱れたり、次に聞こうと用意していたことをド忘れしたりといいことはありません。

このようなことが起きないように、日頃から
車のどこから音がしますか」
どこの道を走っているときに音がしますか」
のような言い方を心がけることをオススメします。

自社のお客様であれば
「バイパスの坂下った交差点」や
「スーパーの裏の細い道」など
症状が出る場所を教えてもらうと試走しやすいですよね。

このように欲しい回答を聞き出す質問を投げていきましょう。

試験対策ではなく、自然な会話をしよう|問診内容一覧

ーいつからですか?「先週です」

あなたなら、次にどのような言葉を返してお客様との会話を続けていきますか?

以下、聞きたい内容とセリフの例を記載しますので一度声に出して読んでみてくださいね

ー先週ですね。
【発生頻度】その一度だけですか?それから毎日ですか?
【継続時間】一度鳴るとどれくらい音が鳴り続けますか?音はすぐに消えますか?
【シフト位置】シフト位置は何でしたか?車は前進/後退中でしたか?
【天気】天気は晴れていましたか?雨でしたか?
【時間帯】午前午後の何時頃ですか?灯火類は点灯していましたか?
【音の聞こえる方向】運転席に座った時に、どの方向から音が聞こえますか?
【車内外】音は外から聞こえますか?室内からですか?
【どんな音】口で表すとどんな音ですか?キーとか、ゴロゴロとか
【音量】どれくらいの音量で聞こえますか?音の大きさは車速と比例しますか?
【車速】車速はどれくらいですか?一般道/高速道路/農道など
【加減速1】一定の速度で走行中ですか?加速中/減速中ですか?
【加減足2】加速/減速しにくいような感覚はありますか?車が重く感じますか?
【エンジンの調子】エンジンの調子はいかがですか?普段より力がないように感じますか?
【ペダル】アクセル/ブレーキは踏んでいますか?どれくらい強く踏んだ時ですか?
【路面状況1】路面は濡れていましたか?乾いていましたか?
【路面状況2】路面は舗装されていましたか?凸凹道/砂利道/マンホールなどはありましたか?
【誰でも】誰が操作してもなりますか?
【整備状態】最近交換/追加した部品はありますか?点検はいつ行いましたか?
【音が聞こえる場所】どのような場所で音が聞こえますか?
【傾斜】道路は傾斜していますか?坂を上/下っているときですか?
【ステアリング操作】直進でしたか?カーブ/右左折/Uターン/すえ切りですか?
【警告灯】メーターの中にランプが点いたり、メッセージの表示はありますか?
【荷重】重い荷物を載せていますか?タイヤの空気圧は正常ですか?

ここでは「加速/減速」のように記載をまとめていますが、実際の試験ではそれぞれ質問する必要がありますのでご注意を。

異音箇所の目星がついてきたら

これかな?と思う部位が出てきた時、上記の内容が聞き終わっていなくても詳しく掘り下げたくなりますよね。しかし、後に「あれっ?」となった時のため、グッと堪えて関係なさそうなところも聞いておきましょう。

「関係ありません」と言われるだけです。

その上で、試験官の回答を整理し、点検したい項目を挙げます。
ここでのポイントは、原因を一つに絞って「この部品です」と答えるのではなく
「〇〇に関係する部品が考えられるので」と前置きして点検したいポイントをなるべく挙げていくことです。


「考えられる」のはどこなのか

お客様を問診して「ブレーキを踏んだ時」「キーという音」「車外」「前から」と聞き出すことができ「パッドが怪しいなぁ〜」と思っても、「異音の原因はブレーキパッドです!」と決めつけて先回りして部品を発注して交換することは少ないですよね。
ましてや現車も見ていないのに。この点は口述試験も同様です。


「ブレーキ系統に関係する部品が考えられるので」としてパッド残量、キャリパーの摺動、ピストンの戻り…を点検したいと伝えます。

頭カチカチで試験風に考えると上記のようになりますが、実際の点検を想像すると他にもパッドの左右差やピストンブーツの状態、キャリパーのピンのグリスやパッドに溜まったブレーキダスト、パッドの面取り、ローターのサビや傷、…まだまだたくさん見ていますよね。

音が鳴る原因がパッドとローターが擦れることであってもその原因を作っている部位を直さないと音は消えませんよね。
そのため、できるだけたくさんの原因になりそうな部位を挙げて「〜を点検します。」と回答するのがよいでしょう。

現役整備士は一級課程を修了したばかりの学生より有利

過去には不具合ではない音というものもありました。解答例はイニシャルチェックの作動音。

まだ学生だった私は、自分の試験の時にこれが出題されていたとして点検箇所を絞ることができたか、良い質問ができただろうかとすごく不安になったことを覚えています。

が、整備士として働く中で、お客様の言う異音は必ずしも車の異常によるものではないということをたくさん学びました。
現場での経験・お客様との会話の機会がある整備士だからこその強みだと思います。

実際の現場を想像してみて、手に触れるものや工具をかけるポイント・記録簿に書く項目など点検ポイントを知っているのは現場経験が長い整備士であることは言うまでもありません。

自社ではあるあるネタだったり、最近整備した車と症状が似ていればその時の経験ももちろん役に立ちます。

口述試験は試験官との受け答えですが、お客様だと思ってしまえば全てこちらのペースで進められます。
異音以外にも色々なパターンを想定して、練習してみてくださいね。

まとめ

今回は国家一級自動車整備士の口述試験、主に異音の問診についてご紹介しました。
想像していた試験内容と比べていかがでしたか?

口述試験の練習はまず

  1. 出題される内容のバリエーションを知ること
  2. 不具合に関する問診の引き出しを増やすこと

から始めてみましょう。
自分の問診の様子を録音・録画してみるのも、独学で学ぶ上で最速のフィードバックですね。

口述試験は合格率の高い試験とはいえ、問診の反復練習で引き出しを増やすことは実務にもとても有益ですので
ぜひ積極的に練習を重ねていきましょう。